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【心どおり】
横田 肇
 ガードレールを突き破って自動車がたんぼの中にヒックリかえっている。車内にはぺ無事故のお守りが何枚もヒラヒラとぶら下がっている。新軍を買ったので、○○神社、△△神社と大層な金を使って無事故のお守りをもらっての帰りときく。お守りはまだ、ぬくぬくしているのに。金は使わずに絶対に事故を起きぬ方法があるのに。それは、法規通り運転すればよかった。
 いよいよ受験だ苦しいときの神だのみというか、学問の神様は大繁昌である。高校のときの倍ぐらいはとなけなしのおサイセンをあげて来たが、見事に落ちた。
 金は使わず、裏口人学もせずに、絶対にあがる方法があったのに。それは、勉強すればよかった。今日からボートだ、メッタに手を合はせぬ佛壇に今日だけは線香まであげて、絶対に当てて下さいお願いしますと、勇ましく家を出たが、あわれ、皆んなとられてションボリ。日本一の剣豪、宮本武蔵日く。
〃神や沸は、うやまうところにして頼むところにあらず"と。もし、頼むところと悟っていたなら、剣の修業は怠り、朝から晩まで酒を呑み、佐々木小次郎に敗れていただろう。
ある宗教の教えに、"相がいどおりの守護はせん、心どおりの守護をずる"とある、まったく、この通りである。
ねがいどおりきいて下さるなら、私は暇だから、朝から晩まで、ひたいから血の出る程畳にこすりつけて願っておけぱ一天井から一万円札がヒラヒラと降ってくるとおもうが。
次男坊が、西大村小学校二年生のとき、下校の途中、諏訪の踏切で警報器が鳴ったので、今も残っている歩道のガードの終点で待っていた。当時はまだ遮断機はなかった。貨物列車が通り過ぎるのを待ち、電器店の前まで来たとき、ひたいから血が流れてシャツが真赤になり、泣き出したので近所の方が田崎外科まで連れて行き五針も縫う怪我をした。
田崎先生が"汽車とケンカして痛くもないとは呆れた"と言われた。その奇跡に皆んなビックリされた。五センチ前に出たら命はなかった。助けて下さいと頼んだのでもない。願ったのでもない。それに命を助けて下さった。私はこれといってよいことをしたことがないのに、子供を助けて下さった。
それは、ご先祖様が苦労してよい徳の貯金をしておいて下さって、そのときろされたのだろう。その貯金を使ったのだ、まだこれから先こんな事がないとは言へない。そのときこの貯金を使ってしまって、「ハイこれでおしまい」となったらどうなるだろう。使い終らないうちに、この私が徳の貯金の補充をしておかねば、子や孫を助ける貯金がない。ご先祖様の残された徳の貯金、これこそ"こころの貯金"であろう。ねがわなくとも、頼まなくとも守護して下さったこと。
こころどおりの守護をして下さつた。
""という字は、真の心を行うと集めてあるときいて、なるほどとおもった、字には皆んな意義がある。
左手が夫なら
右手は女房
「二つ一つが天の理」と教えられる。いかに立派な男でも、まあ五分だ。
即ち半分で、あとの半分は女房が補足するのである。また、いかにしっかり者の女房でも五分ぐらいで、この上に五分をプラスしてゆくところに幸福がある。
この二つが向かい合って手を打てば、よく鳴ったという。
よく成る家は五と五、右手左手がガッチリ合わすことにより、より鳴り、よく成る。左手が下で、右手が上で、あまり離して叩いてもよく鳴らない、これをすれ違いという。夫婦共働きも結構だが、すれ違いばかりやっていると、離婚に結びつく。
また、銘々勝手な心を遣って相反すれば、節と節とがかち合うことになり、ふし合わせ(不幸せ)が現れる。(或る新聞から)

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